ロマンチスト
2011年 10月 05日
20代前半、僕は岐阜県岐阜市のマガジンというライブハウスで歌を歌いました。
その時は久しぶりに会う仲間から声がかかり、オープニングアクトを任されたから手伝ってくれとのこと、
メインアクトは当時スターリンを休止したばかりの遠藤ミチロウさん。
当時の心境を何と云えばいいのか、
僕自身も人並みに「栄光を掴め」「終わらない歌をうたおう」「俺は王様だと思っていた」「盗んだバイクで走りだす」など青春賛歌に酔いしれたりもしましたが、
スターリンの場合は特別で、遠藤ミチロウ氏の世界観を模倣することはとてつもなく恐れ多い行為で、シンプルに「天ぷら」とか「玉ねぎ畑」とか酔った席で冗談半分に叫んだりもしていましたが、それすら何か罪悪感を覚えたりするのです。
正直に言うと怖いのです。
そして気持ちがいいのです。
そのころパンクロックといえばグール、ローズローズ、スタークラブ、アナーキーといった尋常ではないライブパフォーマンスを行うグループが沢山あり、インターネットなどが身近にない頃だったので噂が噂をつくり、誰がやられただの殺されそうになっただのと、今のV系やラウド系のシーンで育った人たちには想像を絶する世界がありました。
その中でも、いや、その外側に遠藤ミチロウと町田町蔵は完全なインディペンデントの匂いをまとって世間に噛みついていたように見えました。

20代前半の自分は半年間滞在したカルフォルニアのサンディエゴから帰国、「セックス・ドラッグ・ロックンロール」といった下らない標語を真に受けて時にチンピラを気どり荒廃した自分に酔い、無頼と虚言を語るという、ほんとうにつまらないどうしようもない陳腐な男でしたが、
マガジンでのライブ、そしてその後の打ち上げでのミチロウさんの佇まいそして言葉に心から自分を恥じ、そして希望をいただいたことを今でもはっきりと覚えています。
そこにいたミチロウさんはギミックを一切持たない真っ直ぐな人でした。
そして、その時に初めて聴いた曲がほんとうに素晴らしかった。
たぶん自分を変えた一曲を挙げるとしたらこの曲です。